という社名をどう考えて作ったか
ここまでテクニック編、基本編、とネーミングについてお話ししてきました。
3回目となる最後は、弊社の名前「 UNDERS」をどう作ったかについてです。
特に社名店名などをお考えの方へご参考になれば。
重めの内容なので、これはいいやと思われましたらテクニック編、基本編をご覧ください(笑)
名刺をお渡ししたとき、このようなやりとりになる事があります。
「UNDERSってなんですか?」
「案を出す、です」
「はあ~あ(納得w)」
実はこれを意図的に起こそうと思っていました。
もちろんすべてではなく、だいたいお渡しした方の1~2割くらいでしょうか。
お聞きになる方がこれくらいいらっしゃると「気にはなった」という方もプラス何割かいらっしゃると思います。
そのような方はこのサイトでも覗いてもらえれば、くらいの狙いです。
昨年、広告代理店さんとクライアント様にお伺いした際には、
代理店の社長様から「案を出す、でUNDRESです」とご紹介いただき、
「お、それは期待できますね!」とおっしゃっていただくという・・
プレッシャーを感じましたが(笑)
これは予想外ですが、ネーミングの狙いはまずまず成功しているかなと思っています。
今回は作業に入る前に、どういうものを作るのかの設定をしました。
ひとつ課題だったのは「コピーライター」がなにをしている人か、世間一般で知られていないことです。それまで僕の名刺は「コピーライター牧野茂」でしたが、これだと伝わらない事がわかっていた。コピーライターという名称は知られていても、実際の仕事はほとんど知られていない。「なんか書く人」「糸井重里さんのような人」大筋イメージはこんな感じです。
そこから起きるのは、何を頼んでいいのかわからないということ。なので一般企業様から依頼が来にくいということがあります。これがデザイナーさんだと「チラシ作れる?」「ホームページできる?」などと聞きやすい。
仕事のイメージがされやすいので。実際の僕らの仕事は、広告の企画立案から制作まで全般です。また、イメージされているようにキャッチフレーズや広告文章も書きます。「コピーライターというのは、名前だけメジャー」社名でこの課題を埋めたいと考えていました。
では、具体的にはどう設定したか。
それは「お客様が僕らを使ったらなにが得られるのか。僕らを使った結果をいう」ということ。
頭に浮かんでいたのは「Topper Through」。コピーライター安田健一さんのお名刺の裏に書いて合った言葉です。社名なのかな?そこまでお聞きしてないんですけど、講座の受講生時代にアドバイス頂ける機会がありまして、そこでお名刺頂戴しました。
「Topper Through = 突破する」です。しかも使っている英単語が単なる当て字ではなく意味が通っていますよね。
コピーライターはお客様の課題を突破する。これを基準にしました。単純にこういう作りのネーミングをやりたいと思ったのもありますけど(笑)
これのなにが良いか。
「丁寧な仕事をします」「頑張ります」というような仕事の姿勢を社名に込める企業は多くいらっしゃいます。ですがそこではなく、例えば、なかなか売れない、来店されない、などといった「課題の解決」をしますよ、という僕らがご提供する価値を、会社名から伝えられる。そしてテクニック編で書いた「日本語のカタカナ化」や「メタファー(比喩)」なども使わないことにした。
もうひとつ、冒頭で書いたようなやりとりを作れるのでないかと思った。お名刺を渡すときからすでに印象づけできないか、また会話のきっかけにできないか、ということです。
そのためにはすぐに理解できるものにせず、ひとつ引っかかりを入れる。かつ意味はきちんと成立していないといけない「はあ~あ(納得w)」と落とせないので。
「Topper Through」はそれ満たしてると思うのです。安田さんのご意図はわかりません。ですが僕はそう使おうと思った。ネーミングの仕事もしたいので「これくらいのものを作るのか」と思ってもらいたいというのもありました。安田さんに勝ちたいというのもありましたし(笑)
こちらをいう企業は多いが、
こちらをいうことにした
ご依頼
企画ご提案
頑張って考えます
頑張って作業します
企画の実施
ご依頼の解決
この設定をもとに、まずは思いつくままに名前案を書いていきました。この段階では設定にそぐわないものでもOK。審査はあとで行うのでとにかく数を考えます。(この数出し法については別の回で解説しようと思っております)
メモしなかったものも含めると50〜60案くらいでしょうか。その中から設定に沿うもの、自分が好きだなと思うものを抜き出しました。20案くらい。それをパソコンに入力、様々な書体で表現してみました。
これは実際に最終選考で使っていたもの。
LASER BEAMは比喩ですね。以前の記事で述べた通り課題を正確に撃ち抜く的な意味です。
CORE TAKE は「超えていく」。お客様の課題を乗り超えていく。使っている単語もCOREは「核心・本質」的なニュアンスTAKEは「捉える、掴む」。「課題の核心を掴む」という意味を込めていました。
UNDERSはこのサイトでも明記しているように「案を出す」。課題解決の案を出す、です。
この二つは日本語のカタカナ化でもない、比喩でもない。純粋に英単語で構成しています。さらに使っている単語が単なる語呂合わせでなく、ちゃんと意味的にも合うものになっている。出来は別として「Topper Through」と同じ構造にはなっている。そこが選んだ理由です。
実はここでひとつ思ったことがありました。
それは、コピーライターという言葉からいきなり「課題解決です」といってもピンと来にくいのではないか、ということ。一般の方にはぶしつけで繋がりを感じにくいのではないか。
そこでこうした。
コピーライター
実際はこうなんだけど
伝わらないのではないか
ご依頼の解決
では、こうしたらどうか
コピーライター
アイデア
をもって
ご依頼の解決
ここにひとつ差し込む
そこで「アイデアをもって」という一言を差し込んでみた。このほうがわかりやすくないか。仕事の実態もいえている。糸井さんイメージにも近くなるかも(笑)
これが決め手となり「UNDERS」を採用しました。「コピーライター = 課題解決」ではなく「コピーライター = 課題解決のためのアイデアを出す」に。そこから「案を出す」→「UNDERS」です。
今回はテクニック編で書いた社名についてよりも、基本編でご説明した商品名に寄せた作りにしています。
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ネーミングで解決したい課題を明確にした。
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そこから今回の設定を決めた。
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自分がなぜ営業なのに企画を作るようになったのか、コピーライトの勉強をするようになったのか、などというキャリアの棚卸作業。
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実際のアイデア出し。
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候補の絞り込み。すでに使われていないか、商標登録されていないかを調べる。
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自分が気に入るか、名刺を渡したい社名になっているかを測る。
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再度設定を見直し、決定。
検索されるとおわかりになりますが、実際には使われている名前です。ですが商標登録はされていなかったり、カタカナ表記だったので採用にしました。気に入っていましたしね。およそ一か月くらいの作業となりました。
名刺を渡したくなる名前かなどを測るためこのように書いてもみました。
ここまでの過程で自分の仕事に対する考え、理念について見直していますので、このページで書いている文章は20~30分で一気に書けました。そのあと直しはしていますけどね(笑)
最後に。
結果的に、社名と企業理念がリンクしたものを作ることができたということ。
それはどういうことか。社名がブランディングの起点にもなりうる、ということです。
うちはこういう考えを持った会社ですよ。こういうものを目指している会社ですよ。社名をこういうことを外に発信していく起点となりうる。
これ実は社員に対しても同じですよね。ブランディングにインナーもなにもないともいえる。なぜなら企業理念について、お客様と社員とでまったく違うことを伝えたらおかしいと思うのです。
この辺りはまた回を設けてお話ししたいと思います。